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クレヨンハウス オーガニックレストラン「広場」(原宿 表参道)

子どもの成長に合わせて絵本を選びに母子連れがここを訪れる。
それももう三世代にわたっている。
そして同時に、食の大切さに気づき、オーガニックな食を学び、
ここからスタートした親子がたくさん。
まさにお母さんたちのオーガニックの登竜門となっている。

お母さんたちのオーガニック登竜門

原宿・青山の表参道駅から歩いて5分。ベビーカーを押しながらで10分弱。表参道から左折した奥に地下1階、地上3階建てのクレヨンハウスがある。

 開店時間の午前11時になるとベビーカーと子どもを抱えたお母さんたちが続々と入店。地下1階のオープンテラスから入るレストランのドア前には折りたたんだベビーカーが整然と並ぶ。そして正午からは近隣のサラリーマン、OLたちが交じるランチタイムに突入。2時過ぎまでほぼ満席状態のにぎわいが続く。

外国人の姿もいつもの見慣れた光景で、まさに多国籍レストランとなっている。それもそのはず、オーガニック(有機JAS認証)食品をベースにメニューを展開していて、また月曜日は「ベジタリアンマンデー」としてマクロビアン、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラル、グルテンフリーなど様々な食べ方に対応できる“ストレスフリー”レストランだからだ。 

写真:(左)有機かぼちゃの天ぷら(右)有機大根と有機リーフの胡麻ドレッシングサラダ

写真:(左)有機トマトの冷製パスタ(中央)有機小松菜と有機人参のからし醤油和え(右)秋川農園黒豚のハンバーグオーブン焼き、きのこクリームソースかけ

おかわり自由のバイキングスタイルで、野菜たっぷり、6種類のお惣菜が日替わりで並びます。しかも野菜、お米、調味料類はすべて有機JAS認定のものなので、無農薬、無化学肥料、非遺伝子組み換え、化学合成物質無添加の安全で旬の食材ばかりがそろっている。

 そしてこのにぎわいは家庭の食卓、一家団らんの安堵感、充足感、しあわせ感を呼び覚ましてくれる。食の安心・安全の危うさを日常的に見聞きし、自からも意識し、注意を払うようになって久しいけれども、外食のときに“心から油断して、疑わず”テーブルを囲み、食事ができる場所はまだまだ希少。

しかもここでは自分たちだけでなく、周りの人たちも“油断しきっている”と思えるからさらに安心できる。なぜかというとみんながみんな笑顔だから。人はおいしいものを食べているときは必ず自然な笑みを浮かべる。不機嫌なしかめっ面をして食べられるものではないからだ。

 核家族、夫婦共稼ぎなどの事情で家族の団らんが消え、「六つのコ食(孤・小・固・粉・個・濃食)」が当たり前になっている今の日本の食卓に、実は「広場」のにぎわい経験は一家団らんイメージを自宅にテイクアウトしているように思える。

 有機栽培は難しく、安定させるまで大変な労力がかかる。しかしそんな生産者の苦労もこのにぎわいを見るならば報われるように思える。

そして、もうひとつ特筆すべきことがある。筆者はこの20年近く、ここに幾度となく訪れていて、ランチタイムの満席状態に何度も遭遇しています。あるときたまたまその時間帯にランチミーティングと称して訪れたとき、途中で「あれっ?うるさくない」と気がつきました。メインのお客さんは母子連れなので子どもたちが多い。しかも乳幼児から2~4歳児の元気いっぱいの利かない子どもたちです。想像してみてください。どれだけの喧騒、大にぎわいかを。(笑)

ところがうるさくないのです。泣いたり、駄々をこねたり、走り回る子どもたち。それを叱るお母さんの声があまり聞こえてこない。なぜ? 理解するのに少し時間がかかりました。店内を何度も見渡してみると、子どもたちは退屈していないのです。食べものがおいしくて、食べることに集中していました。そしてお腹が満足したならば、退屈して歩き回ったりすることなく寝る。

お母さんたちも楽しく食べ、おしゃべりしています。にぎやかで和やかです。まさに食卓の団らん風景そのもの。

また「広場」のメニューには“お子様ランチ”がありません。お母さんと子どもが別のものを食べていると子どものものが熱いのか、甘いのか、不味いかおいしいかがわからず、コミュニケーションが取れないからだそうだ。この気配りは子どもファーストで絵本からスタートしたクレヨンハウスの真骨頂といえる。

お惣菜はどれも家庭で作れるレシピ。気に入ったなら併設のショップで食材から調味料まですべてそろえられます。子どもを守る、育てる目線から選ばれた食品は有機JAS認証、あるいは海外のオーガニック認証を取得したものだけだから、選ぶのもいちいち表示チェックをしなくてもよいので楽。ここでもストレスフリー。食品の品ぞろえには徹底した揺らぎのない姿勢を貫いている。

子どものアトピー性皮膚炎や食物アレルギーに直面して食の大切さにはじめて気づくお母さんたちが多いと聞きます。そのときどうすればいいのか。食の大切さとはどういうことなのか。みなさん長い時間をかけて悩み、苦しみ、試行錯誤する。その入口、出口になる場所(情報受発信地)がここ「広場」。

レストランの域を超えて食の大切さ、オーガニックを知るお母さんたち(最近はお父さんも増加中)の登竜門としての役目を長く果たしている。

新たな試み。オーガニックレストラン認証取得

オーガニックは言葉として市民権を得て、いまや日常的に見聞きする。しかしオーガニックの定義はなんとなくむつかしいというのが大方の印象で「わかりやすく言うと?」と、よく質問される。

同様にオーガニックレストラン、あるいはマクロビレストラン、ベジ&ヴィーガンレストラン等々と看板を掲げているお店も全国各地で見かけるようになったけれど、その実態、正体はわかりづらいのが現状。

たとえばすべてのお店がオーガニック100%の食材、調味料を使っているかというと、まず一年間通じて100%を維持しているお店はまだ存在していないでしょう。またそのレベルも様々でどこも100%を目指して苦労し、頑張っている。

しかしそれでは、お客さんにはわかりづらいまま。「何を参考、基準に判断すればいいのでしょうか」と納得できないのが本音でしょう。基準となる目安、ガイドラインを示す必要があります。その声に応えるためにクレヨンハウスは新たな試みに挑戦しました。

 今年で設立45年。絵本のサロンからスタートしたクレヨンハウスは、同時にオーガニック普及推進の先駆け、パイオニアでもある。有機JAS制度誕生(2000年)のずっと以前の1986年4月、お茶のサロンから「化学調味料不使用、有機野菜使用」の自然派レストランとして原宿に開店した。

そのクレヨンハウスにして、日本の飲食店にはオーガニックレストランを認証する制度がないので、どこもオーガニック素材を使用していると自己申請するしかありませんでした。しかしお客さんにはどれくらいの比率とレベルで有機食品を使っているのか正確にはわかりません。お客さんの信頼を得るには自己申告だけでは限界がある。

そこで2015年12月にNPO法人日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)が第三者認証となる「オーガニックレストラン認証」をはじめたことを機にいち早く認証を取得した。そして、2018年12月に制定された国の制度「オーガニックレストラン有機料理提供JAS」(有機料理を提供する飲食店の管理方法JAS規格)認証を翌19年3月に第1号店として取得。

クレヨンハウスは有機の食材、調味料、加工品の使用を徹底しているからこそ、ここでもパイオニアの役目を果たした。

 その効果はまず在住外国人や外国人観光客から早々と現れた。海外からの旅行者にお店を紹介するツアーコンダクターや宿泊施設の関係者からの問い合わせが多くなった。またベジタリアン、ヴィーガンをはじめイスラム教徒のハラル、ユダヤ教徒のゴーシャなど食のこだわりや食文化に違いのある外国人には、オーガニックを証明されたレストランは安心して食事ができる場所。彼ら専用のガイドブックやSNSに“ストレスフリーのオーガニックレストラン”として情報公開されている。  

 この現象は年々増える外国人観光客の間にまたたく間に広がり、私たち日本人にはまだ実感が乏しいのですが、その認知度と貢献度は計り知れないものがあるようだ。

 有機JASをはじめとする第三者認証は手続きが面倒で、手間もお金もかかる。しかし、年間4000万人以上の外国人観光客が、日本での食を期待して訪れようとしている今だからこそ、国際的に通用する基準をクリアすることは必須であり、当たり前と認識したほうが良さそうである。

 クレヨンハウスの存在はそのお手本、モデルとなっている。

クレヨンハウス オーガニックレストラン「広場」
〒107-8630 
東京都港区北青山3-8-15
営業時間 平日/ 11:00~23:00(LO 22:00)
     土日祝/ 10:30~23:00(LO 22:00)
     *毎週月曜日はベジタリアンマンデー
http://www.crayonhouse.co.jp
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